ねこすたっと

ねこの気持ちと統計について悩む筆者の備忘録的ページ。

Rothman拾い読み:“Population”にまつわるエトセトラ

Rothman先生のModern Epidemiology, 4th edition(以下ME)をパラパラめくって拾い読みしたメモです。 今回は "Chapter 4:Measures of Occurrence" から、population(集団)について。

疫学とは

MEの本文冒頭は、「疫学(epidemiology)とは何か」から始まっている。 これによると疫学研究を特徴づける要素として、

  • 人の集団を対象としている
  • 健康状態を興味の対象としている

の2点があるとのこと。1つ目の「人の集団(population)」という要素については、あとでもう少し詳しくみていく。

次に進むと疫学を大きく2つに分類して説明している。

記述疫学(descriptive epidemiology)とは、疾病や集団の健康指標(年齢、性別など)を記述する疫学であるのに対して、 分析疫学(analytic epidemiology)あるいは病因疫学(etiologic epidemiology)とは、疾病発生における要因(つまり疾病発生の潜在的な原因)の効果を評価する疫学。

でもMEでは、分けて考えると記述疫学が軽んじられやすくなること、明確に分けきれない場合があることを理由に、両者の区別にこだわらないとのこと。

このあと、科学とは何か的な話(帰納法主義とか反証主義とか)が続きます(が、ちゃんと読んでないです)。

集団(population)

「人の集団(population)」は疫学を特徴付ける重要な要素なので、定義や修飾語について説明あり。

MEではpopulationを「ある特性を共有したり、構成員であることの基準を満たしている人たちの集合体」と定義している。 特性や基準とは、年齢や性別のほか、「神戸市に住んでいる(居住地)」とか「薬Aを飲んでいる(受けている治療)」などのことで、これら(さらにはその組み合わせ)でpopulationの構成員かどうかが決まる。条件に合致するかどうかは時間によって変化しうるので、「いつの時点で」ということを明確に決めないといけない。

閉じた集団(closed population)と開いた集団(open population)*1

死亡以外の理由で構成員の出入りが生じない集団をclosed populationという。この場合、観察期間の途中で加入する人はいないので、集団のサイズは死亡が発生するにつれて段々と小さくなっていく。

これに対して、途中加入も死亡以外の脱退もある集団をopen populationという。Open populationでは出入りのバランスが上手く取れていると、集団全体の特性が一定に保たれることがあり、「定常状態(steady state)」と呼んでいる。

コホート(cohort)

Cohort(コホート)はpopulationと同じ意味で使われることがあるが、MEではもっと概念的な特徴として "permanent" と表現している。

ちょっと抽象的で分かりにくかったが、その後の説明で「追跡から脱落すれば研究対象集団ではなくなるが、cohortのメンバーであることは変わらない」とある。追跡できなくなってもpopulationから除外される訳ではなく、追跡できた範囲の情報が利用されたり、追跡できなくなったことも観察の対象だったり、追跡できなくなった後のイベント発生も想像する、という意味でparmanent(永続的, 不変的)だろう(と勝手に解釈)。

コホートのメンバーは、宇宙に行こうが、興味ある死因以外で死亡しようが、どうなったか分からなくなろうが、ずっとコホートの一員だということを表したイラストです。

Source/Study/Target

ここではpopulationに対して用いられる修飾語について説明されている。

源泉集団(source population)
疾病頻度の観察の際にサンプリングされうる集団。特定の場所に住んでいる、特定の病院に通っているなどで、研究参加へ招待されうる人たちのこと。例えば、ある地域住民にアンケート調査をするのであれば、住民台帳に載ってない人は研究に招待されないし、健康保険のレセプトデータを使う場合にはその保険の加入者しか対象者になりえない。

研究対象集団(study population)*2
源泉集団の中で、研究で実際に経過を観察される集団。源泉集団に属していても、研究に何らかの理由で招待されなかったり、参加同意しなかった人は含まれない。

標的集団(target population)
集められた疾病頻度の結果を適用することが妥当であると考えられる集団。標的集団に結果を当てはめられるようにして研究対象集団を含めた研究デザインを考えていく必要がある。

おわりに

  • 学んだこと:"Once a Cohort, Always a Cohort."
  • 猫が夜中にキーボードを踏み踏みしてました。感触が気に入ったんでしょうか。

参考資料

*1:閉鎖集団と訳すと閉鎖的な集団に聞こえるので勝手にこんなふうに訳しました

*2:研究集団と書くと研究してる側に聞こえちゃうので