分かったつもりで使っているけど、よくよく勉強し直したらあんまり分かってなかったことがよくあります。今回はロジスティック回帰モデル(ロジットモデル)について学び直してみました。
読んだ文献は、以下のものです(学び直しと言いながら1本だけです。すいません。)。
登場する関数いろいろ
標準ロジスティック分布(standard logistic distribution)の確率密度関数(probability density function, PDF)は以下の数式で表されます。
グラフを描くとこんな感じ。
curve(exp(x)/(exp(x)+1)^2, from=-10,to=10, main="PDF of standard logistic distribution", ylab="density")
平均が0で左右対称な分布であるという点で標準正規分布(standard normal distribution)と同じ特徴を有しています。
標準ロジスティック分布の累積分布関数(cumulative distribution function, CDF)は、
となります。この関数は、標準ロジスティック関数(standard logistic function)と呼ばれます。
グラフを描くと、
curve(exp(x)/(exp(x)+1), from=-10,to=10, main="CDF of standard logistic distribution", ylab="density")
となります。 y切片が0.5の単調増加関数で、標準正規分布のCDFと似たような形になります。 ちなみに、標準正規分布のCDFは標準プロビット関数(standard probit function)と呼ばれます。
2値アウトカムのモデル化
潜在的な連続変数を介してモデル化する
線形モデルでは、連続変数 を説明変数の線型結合と誤差 でモデル化します。
アウトカム が2値変数のときはこの方法が使えないので、連続変数 を潜在変数として、次のように変換するとしましょう。
このときアウトカムが発生する確率は、
となります。 ここで、誤差 の確率分布が0を中心に左右対称であれば、
となるので、以下のようになります。
右辺は のCDFを使えば計算できます。
標準化誤差の分布を仮定する
ここで問題になるのが、誤差 の分布が分からないということです。 仮に誤差 が正規分布に従うと仮定したとしても、分散が分からなければ における累積確率がどれくらいなのか分かりません。
そこで、誤差 の標準誤差 で割って標準化するステップが必要になります。
こうしておいて、標準化した誤差 が標準ロジスティック分布に従うと考えれば、
となりますし、標準正規分布に従うと仮定すれば、
となります( は標準正規分布のCDF)。
オッズ比の導出
ロジスティック回帰モデルを使うとオッズは次のようになります。
さらにx=0のときに対するx=1のときのオッズ比ORは、
となります。
ロジスティック回帰モデルでは「 係数βを指数変換したものがその変数に関するオッズ比になる」とふんわり理解していましたが、モデルから推定できるのはβではなくβ/σであり、ORはσに依存してしまうようです。
例えば のとき、説明変数を減らすなどしてσが増加すると、ORは低下することになります。
ロジスティック回帰モデルの解釈に関する注意点
アウトカムの発生割合が低い(<10%)ときは、オッズは発生割合の近似として用いることができます。逆に発生割合が高いときはオッズはリスクを過大評価することになります。
この他に、今回の記事で説明したように、推定ORはサンプルや設定するモデルに依存します。 新たな共変量を加えることにより、従属変数の説明できる程度が増すと、σが低下してORは増加します。
どんなデータセットを使うか、どんな説明変数を含めるか、によって推定されるORは変わってしまうので、違うセッティングでORの大きさを比較しても意味がないです。
おわりに
- これまでよりプロビット回帰モデルについても理解が深まりました。
- 数式よりもシミュレーションの方が納得できそうなので、次回やってみたいと思います。
- Norton先生はORに関する問題点を踏まえた上で、限界効果(marginal effect)の使用を推奨しているそうなので、実装方法を勉強してみます。
参考資料
Norton, E.C. and Dowd, B.E. (2018), Log Odds and the Interpretation of Logit Models. Health Serv Res, 53: 859-878.