ねこすたっと

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Rothman拾い読み:交互作用と効果修飾

Rothman先生のModern Epidemiology(4th edition)をパラパラめくって拾い読みしたメモです。 今回は "Chapter 5:Measures of Effect and Measures of Association" , "Chapter 12:Confounding and the Interpretation of Interaction", "Chapter 26:Analysis of Interaction" から、効果修飾(effect modification)と交互作用(interaction)について。

まずはイラストの説明から。
アウトカムに効果を与える要因A, Bがあるとして、それぞれの効果が2-3番目の棒の塗られた部分で表されています。。要因A, Bを同時に与えたときの効果は、それらを足し合わせたものよりも矢印分だけ大きくなっているので、それぞれの要因を単独で与えたときの効果の和と異なっているという状況を表しています。

この状態は、「2つの要因が相互に影響しあっている(交互作用がある)」と表現されたり、「一方の要因の効果は、他方の要因Bの状態によって修飾されて一定ではない(効果が修飾されている)」と表現されたりするので、両者の区別をしておこうという記事です。

交互作用(interaction)とは

ME, Chapter 26の冒頭では次のように書かれている。

It is common for the effect of one exposure on an outcome to depend in some way on the presence or absence of another exposure. When this is the case, we say that there is interaction between the two exposures.

つまり交互作用(interaction)とは、要因の効果が他の要因の有無に依存する状態のこと。「効果修飾と交互作用の違い」を理解できなくて悩んでましたが、ここではあくまで解析モデルの観点から「交互作用とは何か」を述べているだけだと理解することにしました。乱暴に言えば「回帰モデルに交互作用項を追加して、係数がどうなるか見る」という点においては効果修飾も同じだろうということ。

交互作用を検討する目的としては、

  • 治療効果が高いサブグループや、介入が有害となるサブグループを同定したい
  • 複数の要因の影響を考えることでメカニズムを解明したい
  • 単にモデルの当てはまりがよくなるから

などがあるとのこと。

交互作用があるかどうかは効果の指標に依存する

加法的交互作用(additive interaction):
差を使った効果指標(絶対効果指標)で見られる交互作用。プラスの作用ならsuper-additive, マイナスの作用ならsub-additiveと表現。

乗法的交互作用(multiplicative interaction):
比を使った効果指標(相対効果指標)で見られる交互作用。プラスの作用ならsuper-multiplicative, マイナスの作用ならsub-multiplicativeと表現。

効果指標修飾と因果交互作用

効果指標修飾(effect-measure modification)とは、要因の効果が層ごとのことなっていて、均一でない(heterogeneous)こと。冒頭のイラストで言えば、要因Bがあるときとないときで、要因Aの効果が変化していると捉えることができる。要因Bは要因Aの効果修飾因子(effect modifier)と呼ばれる。

前述のとおり、用いられる効果の指標によって修飾の有無・方向・程度が変わりうるので、効果修飾ではなく効果指標修飾(effect-measure modification)と呼ぶ方が正確。

交絡調整の観点から言うと、主たる要因Aの交絡が調整されてさえいれば、要因Bによって分けた各層の中では要因Aとアウトカムの関係を適切に捉えられている。

これに対し、2つの要因の効果の両方に興味がある場合は、要因Bについての交絡も調整されていないといけない。この場合は「効果指標修飾」から区別して、因果交互作用(causal interaction)と呼ぶことがある。

効果修飾と交互作用は解析モデルの点では同じだが、そのモデルに含める因子を考える段階では上記の違いがある。交互作用の前にわざわざ「因果の」とつけたのは、効果修飾と違うスタンスであることを明確にするため、と考えました。これについては、ME, Chapter 26の以下の記載にもとづいています。

When we control for confounding for both factors, we might refer to this as “causal interaction” in distinction from mere “effect heterogeneity” mentioned above.

おわりに

  • 2つの要因への興味が対等か、主従があるかという違いは、交絡として何を調整するかに関係してくる。

参考資料